※ 死ネタ注意
破れた世界で足を投げ出して座ってるアカギに、ヒカリは「見つけました」と声をかけた。努めて明るく、それは外の世界の様子を自分を通じて知ってもらうためだ。 「お腹すいてますよね?」 相変わらず目は虚ろだったが、アカギの足取りはしっかりしたもので、それはヒカリを安堵させた。 「無理だ」 アカギはヒカリの手を引いて俯いた。自信がないようだった。 「心配しないでだいじょぶですよ!」 ヒカリは明るく声をかけた。アカギの眉間に寄る皺を、背伸びをしてなでてやる。 「そんな顔しないで、前を向いてください」 ヒカリは辛抱強くアカギが動くのを待った。 「……もう、どうでもいいか」 アカギが諦めたように前を向いた。体の力を抜いたアカギの手をヒカリが引いて、ふたりは元の世界に戻っていった。 再び視界を取り戻すと、目の前には輝く泉。ふたりの足元には白い花が咲き乱れている。風が草花を揺らし、アカギはその場に倒れこんだ。ヒカリはアカギがふざけているのだと思った。アカギは苦しそうに胸を押さえている。 「アカギさん?」 どうしたのか、と尋ねてゆさぶっても、アカギは返事をしない。切れ切れに呻き声があがる。 「いま、だれか呼んで、」 ヒカリの手を強く引いた。若草がアカギの頭の下でつぶれている。大丈夫、というアカギの言葉をヒカリは信じた。 「私は、一体何のために生まれたんだろうな」 ヒカリは力強く言った。アカギは顔を歪ませて、「それでは遅い」と嘆いた。アカギは泣いていた。心臓の動きはきまぐれで、今にもその仕事を止めてしまいそうだった。自分におしげもなく好意を示してくれる少女とアカギの思考はあの時から何も変わらない。平行線だ。アカギの心中を察するに、ヒカリは幼すぎた。 この永遠に続きそうなほどの苦痛も、もう終わる。 風が一瞬強く吹き、花は揺れ、水面もさざ波だった。だがそれもすぐに止まり、泉は元の静けさを取り戻す。 |